「大学院に進もうか、進まないかとても悩んでいる」
カウンセラーに伝えた悩みは、僕が心理職になるうえで躓いているものだった。
カウンセリングを受ける人の悩みを「主訴」という。僕の主訴は「自分が大学院に進む器があるか」ということだ。
また「耳が過敏でこれ以上アパートに住むのが苦痛」ということも相談した。
大学に入ってすぐ、自分に都会は無理だと思った。
耳に入り込んでくる無数の音、電車や車の騒がしい声。僕の5感は自然豊かな田舎で育まれたもので、都会には耐えられない。
だから、寝る前にトンという小さな音でも目が冴えてしまうし、鼓膜なんて張り裂けてしまえとさえ思う。
だから、大学院に進んで耳の過敏さにもう2年間苦しむと思うと「絶望」の2文字が頭に浮かんだ。
そのため、「大学院に進むか、それとも都会が苦痛だから大学院を辞退するか」をカウンセラーに相談した。
「感覚の過敏さはセラピストに必要なもの」というカウンセラーの言葉

「耳の過敏さはセラピストにとっていい兆候だよ」
そうカウンセラーに言われて僕は救われた。
カウンセラーいわく、東京はたくさんの情報に溢れていて感覚が過敏だと住みにくい。
しかし、感覚の過敏さは「感覚が開いている」ということで「セラピストになるうえで役に立つ」という言葉をいただいた。
「セラピスト」とは、支援者・カウンセラーの言い換えみたいなものだ。
僕が目指しているカウンセラーも、言い方を変えれば公認心理師、臨床心理士、対人援助職、そしてセラピストとも呼ばれる。
そのセラピストにとって「感覚が開いている」ことはなぜ大切なのか。
どうやら、都会に住む人は多くの情報を敏感に捉えていると疲れてしまう。そのため、感覚を閉じて鈍感になることで、多くの情報に惑わされないようにしているらしい。
これは、有名な精神科医である「神田橋條治」の本の中で書いている。
感覚を閉じていると、感覚が開いているクライエントの気持ちを感じようとするのは難しい。
「耳や目、鼻が敏感で苦しんでいる人がカウンセリングに訪れた時に、君の開いている感覚は役に立つ」
そう言われたようで、自分の嫌いな耳を少しだけ受け入れられるようになった。
そして、感覚の過敏さについての分かりやすい情報が、コンプレックスの受容を促したのかもしれない。
神田橋條治さんの本はこちら▼
コミュニケーションが苦手だからカウンセラーには向いていない?

僕がカウンセラーを目指してきた中で「コミュニケーションが苦手」というコンプレックスがあった。
初めは些細な悩みに見えていたものが、大学を通して「致命的な欠陥」と思えた。
アルバイトも苦手な上司がいるとすぐにやめてしまうし、「人といるだけ」で体力を消耗してしまうことはそうでない人よりも不利だ。
また、大学の授業も自分がカウンセラーに向いていないと思うきっかけとなった。
公認心理師には「多職種連携」という役割がある。
この「多職種連携」とは、「支援に関わるいろいろな仕事の人と協力して、支援する人に最大限の支援をしましょう」ということだ(うる覚え)。
大学では、「多職種連携が特に大切」というように「心理学の専門性も大事だけどコミュニケーション力が大切だよ」と繰り返し聞かされた。
それを授業で聞くたびに「僕はカウンセラ―を目指しても良いものか」と悩んだ。
そのため、「コミュニケーションが苦手な僕が心理職を目指してもいいのか悩んでいます」と、カウンセラーに正直に打ち明けてみた。
コミュニケーションが苦手でもいい

その悩みに対するカウンセラーの言葉を聞いて、「コミュニケーションが苦手」というコンプレックスも強みに思えるようになった。
その会話の流れを今も覚えている。

自分がクライエントだとしてコミュニケーションが苦手だとする。そんな時、目の前のカウンセラーがコミュニケーションが得意な人だったら、○○くん(僕の苗字)は相談しようと思う?

いや、もう悩みを話そうとは思わないです。

そうだよね。今、○○くんが悩んでいることは、将来カウンセラーになったときに悩んでいる人に寄り添える武器にもなるんだよ。支援者は少しなよなよしてるくらいの方がいいのかもしれないよ。
この言葉によって、自分のコンプレックスが「カウンセラーとしてクライエントに共感できる強み」に変わるかもしれないと希望をもてた。
この言葉が真実かそうでないかはわからない。しかし、自分のコンプレックスを受け入れることに繋がった。
やはり、プロのカウンセラーの技術は素晴らしい。
使っている療法は薄々感じるけど、治療成績がよいカウンセラーほど、どんな理論や療法を使っているかわからないくらい、技術を芸術的にカウンセリングの中にちりばめる。
カウンセラーを目指していいのかという初歩的な悩みに躓き、大学院に進むことへの僕のネガティブな考えを良い方に導き、自分を受容できるように促す。
このように、自分のコンプレックスは強みでもあると気づかせてくれたカウンセラーのカウンセリングを、大学院の入学辞退の締め切りギリギリに受けられた良かったと思う。
カウンセラーを目指す人におすすめの本はこちら▼
(読んでみてカウンセラーに求められる「共感」の姿勢について参考になった。カウンセラーを目指さなくても、家族・恋人・後輩との接し方のヒントも得られるだろう。)
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