「うん、なんとなく読めるようになってきた」
英語の試験が始まり、1回目よりも英文の内容が頭に入りやすかった。1回目の入試に落ちてから、書く勉強でなく見る勉強に切り替えたことで、見違えるように英文を読解する力が上がった。
今回の英語試験は、長文の空欄に接続詞や副詞を補うという問題や、下線が引かれた文を和訳するという問題がある。
元々、苦手な英語だったけれど、とある国の心理学的な教育システムについての長文だったから、一見難解そうに見える言葉も心理学の知識で補うことができた。
「ふう、1回目よりは良かったけれど自信は持てないな」
相変わらず英語への苦手意識は抜けていなかった。しかし、英文全体を細かく切って説明できるようになった。
A大学に落ちて数週間落ち込んでしまい勉強は疎かになってしまったけれど、I先生や近しい人の励ましで試験日にこぎつけることができた。
しかし、まだ入試は終わっていない。最後は面接試験だ。間を置いて、早い順から受験番号が呼ばれていく。
「〇番さん」
「はい」
荷物を持って面接室へと向かう。母校ということもあり、知っている先生がいるのか、「苦手な先生でなければいいな」と思い、かつかつとスーツの靴を鳴らせながら歩く。
面接室の待ち椅子に座り、10分経つと他の受験生が中から出てきた。
そして、自分の番になる。
「〇番さん」
「はい」
扉のノックから着席まで、面接の基本をしっかりとして席に座る。
「あれ、優しいT先生じゃん」
口には出さなかったけれど、大学でよく話しかけてくれた T 先生ともう1人の先生(大学院でお世話になる)が面接官だった。
しかし、面接ということもあり、顔はピりついているし、淡々と面接は進む。
志望理由や、研究計画書への指摘、大学院の生活面など想定通りの質問が来る。そして、最後に
「博士課程への進学は考えている?」
「はい、考えています。博士過程に進んだとしたら日本語版のホームシックの尺度を作りたいと考えております」
このように、練習はしていなかった質問だけど、元からホームシックの尺度は海外のものばかりで日本人を対象としたホームシックの尺度を作るべきとの思いを全力でぶつけてみた。
すると、面接官の先生は「おぉ」と少し頷いて、僅かながらに好印象を与えられたと思う。
「まぁ受かるかは分からないけど、全力は尽くした」
バス停に乗り、他の受験生もちらほら見かけながら帰る。合格判定は2週間後で、受かっていても受からなくてもA大学の絶望は一度乗り越えられたし、S先生を目指したい気持ちは消えていない。
「ご褒美にホイップクリームデニッシュ食べるか」
受験の合否でなく、受験に行った自分を労って、当時大好物だったローソンのパンを買った。