「では始め」
次は、英語の筆記試験が始まった。僕には記号が並んでいるようにしか見えなくて、1段落を読み終えるのに多くの時間を費やした。
下線がある文を和訳するという問題で、前後の文脈と、その文法や単語を理解しなければいけなくて、分からずに手が止まる。
そして、下半身に違和感があった。昼間にコーヒーを飲みすぎたせいか、尿意が来るのが早くなっており、それに耐えながら必死で英文に向き合った。
「あー、全然わからなかった」
一応全ての問題を解いたが、長文の細かい情報を見落としていた。
僕は好きな心理学では人と戦えるけれども、英語といった、義務教育での1つの正解を求めるゲームは、自分の上がる土俵ではない。
しかし、そんな落胆の気持ちがあっても面接は始まる。
「それでは、受験番号が呼ばれてから面接室に来てください」
「あぁやばい」と、筆記試験にこころを引っ張られないように、面接ノートに目を通す。
心拍が上がるのを抑えるように、ペラペラとページを必死でめくる。
「〇番さん」
「はい」
そう、自分の番号が呼ばれて、面接室に入る。席に座り、大学院の先生と向き合って質問に答える。
面接は研究計画書を元にしたもので、「なぜこの大学に入りたいか」という動機を聞く基本的なものだった。が、緊張で、顔と声はこわばり、堅苦しい受け答えになってしまう。
「もう少しお遊びメンターの、愛想のいい仮面をつければよかったな」と後悔する。
「ふう、やっと終わった」
面接が終わり、ひとまず1回目の入試は幕を閉じた。
英語やスーツの着こなし(僕は「スーツに長靴下を履く」という正装から逸脱した、半くるぶしソックスを履いて行った)や、面接の受け答えが記憶に染み付き、「あれはよかった悪かった」と合否を待ち遠しく反すうする。
受かれば岩手県で心理学を学べるし、実家にも頻繁に帰れるようになる。かといって、自分を育ててくれた大学院に進まないことに多少の負い目を感じながら、疲れが溜まっていたのか、車に乗りながらまぶたが降りる。
▼ 現在も愛読している参考書。心理学についての英単語や、論文的な文章がわかりやすく和訳・解説付きでのっています。寝れない時によく寝床で読んでいます。