心理学実験の冊子を見ると、今回の種目に「質的研究」と書いてある。「何だこれ」と思いながらも、指定された教室でクラスメイトと交流する。
すると、先生が教壇に立ち、今回の実験の内容を説明する。
質的研究とは、文字データを扱うことで最後に仮説を生成する研究法のことだ。「量的研究」と呼ばれるものは、人に質問紙を配ったり、実験に参加してもらい、そのデータを数値化してそれを分析する。
一方、質的研究では、対象者から話を聞き取り、その対話を録音して逐語化(録音した会話を文字に起こす)したものを扱う。
「意味がわからない」
当初の僕はそう思い、先生の話が頭に入ってるのかどうかすら怪しい状況だった。しかし、分からなくても実際に体験してみると、理解は幾分かマシになる。
まず、指定されたペアとなり、「将来の進路について」インタビューする人・される人に分かれ、その対話をレコーダーで録音する。
その後、録音した音声をパソコンで開き、聞きながら文字に起こして1文ごとに区切ってみる(切片化)。
例 「就職についてとても悩んでいます。花屋さんへの就職を考えていて,,,」 |
→(切片化)①就職について悩んでいます / ②花屋さんへの就職を考えていて |
→(ラベル)①進路選択についての強い悩み / ②すでに具体的な就職先を考えている |
→(カテゴリー) ①進路選択への意識 / ②就職先への考え |
切片化した後は、その語りに対する定義や意味づけを分け、ラベルをつけるという作業をする。
例えば、「将来、○○会社に就職しようと情報収集をしています」という語りには、「就職への意欲」「高い」「情報報集への意欲」というように、ラベルやカテゴリーをつける(2つの明確な違いは、あいまい。勉強不足)。
授業で行った、質的研究であるグランテッド・セオリー・アプローチの説明は未熟だけど、語りを逐語化して、それをデータとして扱う研究法と僕は捉えた。
そして、僕の好きなO先生や、この教科を担当した先生は、質的研究に力を入れている先生で、心理学の研究者にも量的研究をしている人と質的研究をしている人というように大まかに分けられることを知る。
そして、これは案外、大学院入試でも重要になる。
「やば、この先生、質的研究の先生じゃん…」
大学院入試では、研究計画書と呼ばれる、大学院に入ってからしたい研究の計画書を提出する。僕は、量的研究の先生のゼミに入っていたし、「ホームシック」という感情を扱うには、量的研究の方が相性が良いと勝手に思い込んでいた。
そのため、研究計画書の内容も、質問してデータを集めてそれを統計ソフトで数値化するという、量的な研究だった。
しかし、「岩手に帰りたい」という理由だけで、ある大学院を選択して指導を受けたい先生の論文を見ると(大学院入試では、提出書類において「指導を受けたい先生」の名前を書くところもある)、その人は質的研究や面接法(言語のやり取りでデータを取る方法)の論文を書いており、量的研究と対を成す存在に思えた。
「やってしまった…」
とりあえず、苦しいホームシックに蓋をするために大学院を選び、指導を受けたい先生はホームシックを研究している人ではないけど(それも致命的)、それと近い概念である「異文化適応」を研究している人を選んだ。
しかし、質的研究を得意とする先生に、「指導を受けたいです」と、量的研究の研究計画書を無謀に提出したことは、今思えばすでに結果が決まっていたのだろう。